20XX年ミートパイの旅

雑記ブログ

みなさんはミートパイという食べ物についてご存じだろうか。

パイ生地の中に、甘いフィリングではなくミンチやサイコロカットされたお肉が入っている食べ物である。

食べたことが無い人は味付けについてミートソースを想像しがちだが、今から私が語りたいのはそれとは違う。スパイシーで肉の味がダイレクトに来るジャンキーな味のものだ。

これは、ミートパイに出会い、最初は何とも思っていなかったが次第に惹かれていき、住む先々でミートパイを探し求めた記録である。

2004年

ミートパイとの出会いは2004年に遡る。

私は初めての海外渡航に浮かれていた。行った先はイギリスのストラトフォード=アポン=エイボン。滞在期間は10日間で、そのほとんどをホームステイ先で過ごした。

私がお世話になったのは町から少し離れたおじいちゃんとおばあちゃんの二人暮らしのお家だった。

イギリス人らしく「Lovely!」とよく言っていた優しいおばあちゃんは、足が悪く食事を自室でとるため食卓を一緒に囲むことはなかった。2人のうちどちらが調理してくれていたのか忘れてしまったが、同じステイ先に振り分けられた友人2人と、少し無口なおじいちゃんと毎晩食卓を囲んでいた。

イギリスはご飯が美味しくないとよく聞くが、基本的にはこのように家庭で食べていたので特に気にならなかった。

とはいえ、覚えているのは家で作った四角いピザにおじいちゃんが「vinegar, vinegar…」と言ってビネガーをしこたまかけていたことと、この時初めて食べたミートパイである。記憶では大きなパイを切り分けて食べた気がするが、間違いなくイギリスの地で初めてお目にかかった食べ物だった。

実際この時の感想は、飛び上がるほど美味しいと思ったわけでもなく、口に合わないと思ったわけでもなく、ごくごく普通に「こんなパイ初めて食べたなぁ」と思いながら食事を終えた気がする。

衝撃としては、ピザに酢をかけるおじいちゃんの方が大きかったかもしれない。イギリスで覚えた英語は「vinegar」と「peacock」だ。

2008年

京都の大学に進学して特に就職に対してのやる気も目標もなく過ごしていたのだが、ある日うっかり「海外インターンシップ」の掲示を見て申し込んでしまった。うっかり面接に通り、事前授業を受けて気付いたらオーストラリアに来ていた。

滞在期間は一ヶ月、ブリスベンにある日本人向けのフリーペーパーを発行するオフィスに通っていた。何時に来て何時に帰る!といったキッチリしたワークスタイルではなく、やることに合わせて動いていたので、観光や町歩きに充てる時間が取りやすいのが嬉しかった。

そんな中で、丸一日オフの日に観光ツアーに参加したことがあった。

アルパカファームに行けるというところに魅力を感じて申し込んだのだが、ガイドは英語でよくわからないし、アルパカファームはバスから見学するだけでショックだった。

そんなツアー中に軽食の屋台でミートパイと再会したのである。この時食べたのは片手で持てるサイズ。後から調べてわかったのだが、ミートパイはオーストラリアの国民的ファーストフードらしい。

確かにハンバーガーサイズのあつあつのミートパイを齧って鳥に襲われていた。

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この時も「久しぶりに食べたなぁ」とか「イギリスとオーストラリアは関係深いからなぁ」とかしか思わなかった気がする。あと、もしかしたらツアー中じゃなくて植物園に行った時かもしれない。

2013年

私は大阪に住んでいて、ある日ふとミートパイのことを思い出した。

思い出したと同時に、またすぐ食べられるはずだと思った。

何故なら日本には世界中の食べ物が集まっている。高級フレンチだって、大衆的な中華料理屋だってすぐ見つかる。インドカレー屋はどんなローカルな町にもあるし、当時住んでいた大阪の家の近所にはネパール料理屋がオープンしていた。街中にはブリティッシュパブのチェーン店があり、そういえば京都でロシアンカフェに行ったこともある。

思い出すと急に食べたくなってしまう。東京に次ぐ大都市である大阪だ、すぐに見つかるだろうとGoogleの検索画面に「ミートパイ 大阪」と打ち込んでみた。

そして私はその結果に愕然とするのである。

結論から言って、大阪…いや関西でミートパイを提供している店は3つしか見つからなかったのだ。

ユーハイム「神戸牛のミートパイ」

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洋菓子のお店であるユーハイムがミートパイを出していることがわかった。梅田の阪神百貨店の地下に店舗があったので、すぐに足を運んでみた。

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 確かにミートソースではなく、肉の味がダイレクトにくるものではあったが、味付けが和風だった。ゆで卵まで入っている。私の記憶の中のミートパイとは全く違っていた。

Kiwi’s Pie

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オージーミートパイを売りにしている路面店で、堀江にあったのでこちらもすぐに行ってみた。

食べた瞬間「ああ!こんなんだった!」と嬉しくなった。形状もフィリングもオーストラリアで食べたものと同じ、しかしかなりコショウが効いていてスパイシーである。

確かにこれぞミートパイなのだが、ひとつ食べると欲が出て自分の好みの味をもう少し探してみたくなる。

りおくんのミートパイ Rio Pies

日本で一番ミートパイを推しているのはこの「滋賀のミートパイおやじ」なのではないだろうか。

ホームページから感じる熱量…ミートパイを食べたいが日本には販売店が無かったため自分で作りはじめ、それを売るためにパン屋を開き、最終的には日本初のミートパイ専門店をオープンしてしまったというミートパイおやじ。

やっと見つけた!と思ったが、店舗が滋賀なのである。

しかもどうやら駅前というわけではなく、車が無いと行けそうにない。となると、誰か車を持っている人間を捕まえるか自分で運転するか、いや駅からタクシーやバスという手もあるかもしれない…と考えながら検索を続けると驚くべき情報が出てきた。

どうやら堀江のKiwi’s Pieはこの店の暖簾分けなのだという。ミートパイおやじのサイトを見ると、業者販売のページがあったので、暖簾分けというよりはおそらくその類だろう。つまり、ここに行っても堀江で食べたミートパイと同じ味しか食べられないのだ。

ちなみにこの次の年くらいに、京都の八坂エリアのお土産物屋さんの奥のカフェスペースでミートパイが売られていて食べてみた。

Kiwi’s Pieと同じ味だったので、ここも滋賀のミートパイおやじが卸していたのだろう。その店舗はその後通った時に覗くと無くなっていて、今調べたところなんとKiwi’s Pieも閉店している。

関西のミートパイ事情に愕然とした私は、「ミートパイ 東京」でも検索してみた。

しかし、私はさらにショックを受けることになる。東京でミートパイが売られているお店で、確実にわかるのが「ユーハイム」しかなかったのである。

東京よ、世界のグルメが集まっているのではないのか。そんなものなのか、Tokyo。

何故イギリスでもオーストラリアでもニュージーランドでも愛されているミートパイの店が無いのだ。

yahoo知恵袋によると、いくつかのパン屋でミートソースでないミートパイを販売している店もあったようだが、そこにあげられていたお店は無くなっていたり、もう所在がわからないものばかりだった。

こうなると俄然食べたくなるミートパイ、もうあの味には会えないのだろうか。滋賀のミートパイおやじしか選択肢はないのだろうか。

いや、むしろこうなると滋賀のミートパイおやじよありがとう、である。「コショウが効きすぎだ!」なんて言いつつ、堀江の店には何度か通ったのだった。

2014年

オーストラリア滞在中に私が好んで毎日のように食べていたものがある。それは「味付きツナ缶」である。

これも「何故日本で売らないのか!?」と誰かを問い詰めたいくらい素晴らしい。

カレー、スイートチリ、レモンペッパー、トマトバジルなど様々な味付けのツナ缶が色んなメーカーから販売されているのである。オーストラリアのスーパーのツナ缶コーナーは大変豊富でプレーン含め色とりどりのツナ缶が壁一面に陳列されていた。この「味付きツナ缶」もどれだけ探しても日本で買えないことがわかり、友人がオーストラリアに旅行すると聞くと買ってきてくれるよう頼んでいた。

その日も、古くからの友人がオーストラリア旅行から帰ってきたので1000円札と引き換えに譲ってもらうために家を訪ねていた。

彼には事前に「ミートパイは絶対に食べて来い」と言っていたので、その感想を尋ねた。その話の中で、彼の食べたミートパイはチェーン店のもので、どうやらもうすぐ日本に上陸するらしいという情報が手に入ったのである。

急いで検索してみると、その店の名前は「Pie Face」、ダスキンが2015年春から日本に展開するのだという。ダスキンはミスタードーナツを経営している企業だ。これはすごい!来年の春になったらミートパイが食べられる!しかもオーストラリアで大人気のお店の!

2015年

東京に住まいを移していた私はミートパイがやってくるのを心待ちにしていた。

しかし、春になってもミートパイは上陸しなかった。

どうやら予定が押したようで、数ヶ月遅れて11月に渋谷のMODIに現れた。MODI自体、リニューアルオープンしたばかりで、その一階正面に店舗が構えられた。もうひとつの店舗は川崎らしい。

渋谷のド真ん中のオシャレ商業施設に出来てしまったということは、これはもう台湾のふわふわかき氷やハワイのクリームてんこ盛りパンケーキのように一大ブームになってしまうかもしれない。

そうなると、しばらくは簡単にありつけずに煩わしいかもしれないが、そのうち新宿や下北沢など、私の居住エリアにもどんどん近付いてきて、なんだったらスーパーで冷凍のものが売られるようになるかもしれない。嬉しい想像が膨らむ。

起きろ!ミートパイブーム!と思いながら、ひとまず渋谷に足を運んだ。

Pie face

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結果としては、ここも私の期待していたミートパイの味ではなかった。

このお店が間違っているのではない、オーストラリアの国民食であるミートパイは、家庭やお店によって味付けも肉の形状も異なるという。パイの形も違う。ただ、この日本に上陸してくれたチェーン店の味が私の求めていたものとは違っていただけだ。

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もちろんこれはこれで美味しい。ごろっとした肉に少しカレーの気配がするようなスパイスの効いた味だった。ちなみに甘いものもあり、種類が豊富だった。

他に東京でミートパイに確実にありつけそうなお店は、調べてみると残るは中野にあるオージーバーだった。しかし、ここに行く前に私は東京を離れることになる。

2018年

ふたたび京都に住まいを移し1年が過ぎたころ、友人が車で遊びに来てくれた。ランチにでも行くか、車もあるし少し行きづらいところでも大丈夫だなぁ、と考えた時、かねて野望が浮かんだ。

滋賀のミートパイおやじの店に行きたい。

そう、車でもないと行けない場所にあるミートパイおやじのお店に行くのは今日がベストタイミングなのではないか。幸い車もある、京都からなら1時間程度だろう。戸惑う友人に「運転はするから」と告げて滋賀へと走り出した。

滋賀への道は何度か通っている。知った道を走り、住宅街を抜け、草木に囲まれた細い道をカーナビを頼りにどんどんつき進む。その先に建物は現れた。

これだ。

何度もブログで見た、おやじのバンガローである。

しかし、人の気配がしない。おそるおそる扉に近づいてみると

閉まっていたのである。

この頃、営業日が不定期になっていて運悪く閉店時に行ってしまった。滋賀県まできて、1時間近く車を走らせてこれなのか。

そして先ほどサイトを確認したところ本格的に閉店していた。

これからどこでミートパイを食べればいいのだろうか?なぜミートパイは日本でウケないのだろうか?

2020年

ここまでミートパイを追ってきた記録を改めてアップするにあたって、最新情報のミートパイ情報も調べてみた。

すると、京都市右京区に『ジェリーズ・パイ』というミートパイ屋さんがオープンしていることがわかった。

ミートパイおやじの店がなき今、新たな望みは嵯峨嵐山のジェリーおじさんだ。

幸い、そう遠くなかったので行ってみた。

ジェリーズ・パイ

住宅街の中にそのお店はあった。入口の前にはメニューとパイについての説明が書いてあった。

「日本人のイメージするパイとは少し異なり、見た目、食感はタルトやスコーンに近いものです」

そう、すでに調べた時点でわかっていたのだが、ここも私が求めているミートパイではない。しかし、食べないわけにはいかないのだ。

スタンダードな「牛肉とたまねぎ」にした。味は結構好みのこれぞミートパイという味、そして玉ねぎの甘さがいい。肉はミンチではなく、少し塊がある肉々しさ。

肝心の「スコーンやタルトに近い」生地は、最初はやはり求めていたものとは違う予想通りのものだと思ったが、パイ生地のように油っぽさがない分、中身に集中出来るように思える。

これは店頭で食べる用に温めてもらったが、基本は冷凍販売というのも手軽かつ布教しやすそうで良い。

おわりに

まだ私のミートパイの旅は続いている。

有用なミートパイ情報をお持ちの方はご一報を。

ちなみにアイキャッチ画像は自作のミートパイである。こちらも試行錯誤を重ねている最中だ。

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